実務を見据えたVR 「zSpace(ジー・スペース)」

VR元年と言われた2016年から1年が経過した。

バーチャル・リアリティについての期 待とその現実、過去と未来、そして教育・医療・エンターテインメント等に使われているデバイス 「zSpace」について紹介する。

1. zSpaceの誕生

zSpaceは、米国zSpace社が開発したバーチャル・ リアリティ・ディスプレイである。zSpace社は2007 年に設立されたベンチャー企業である。Central Intelligence Agency(CIA、アメリカ中央情報局)の運営するベンチャーキャピタル「In-Q-Tel」から、 技術設計、指導教育、コミュニケーション分野における活躍を期待され、投資を受けて設立された。

zSpaceは、従来のキーボード・マウスによる2Dでの操作だけでは業務を行うことのできない、3D 空間におけるオペレーションを必 要とするユーザを対象としていた。

最初のターゲットはエンタープライズ市場であった。そのポテンシャルの高さがカスタマーから注目され、医療・教育・ゲームなど、様々な分野に進出していくこととなる。

そして2012年、zSpaceはNASA (アメリカ航空宇宙局)の TechBriefsにおける注目プロダクトに選ばれた。

バーチャル空間上での仮想オブジェクトとの、リアルな対話を実現するためのプログラムを使用して、未来においてロボットとの対話 を実現するためのインタフェース・テクノロジと してテストされた。

同年、Computer Graphics World Conferenceに おけるBest in Showを受賞。その後、医療、教育等の分野での研究が進み、今日に至っている。

2. 教育分野での利用

現在のzSpaceは、アメリカにおける教育現場に おいて導入が進んでいる。アメリカでは教育や移民問題を論じる政策提案の中で、ハイテク職種に適した労働者の不足、科学・技術・工学・数学を総合的に教えるカリキュラムの不在が問題視され、これらの分野に精通した市民を継続的に育成するため、これらの教育に力を入れることとなった。

これは、Science、Technology, Engineering and Mathematicsの頭文字を取ってSTEM教育と呼ば れている。

Education(教育)と、Technology(技術)を組み合わせた、Edtech(エドテック)という概念がある。

先日、一部の州でオープンソース教科書採択の動 きが広がっていることが話題になった。このようにアメリカの教育現場では、最先端の技術を貪欲に導入し続けている。

インターネットはもはやあって当然の物となった。スマートフォン、IoT、ドローン、バーチャル・リアリティ。これら高度なテクノロジのニーズの高まりにより、STEMをもっと学びたいという学生の要求は増している。

退屈な座学だけで無理矢理言葉を頭に詰め込む 従来の学習方法より、リアルを追求した視覚表現、使いやすいインタフェイス、インタラクティブな経験を通じて複雑なSTEM学習を行うことが、生徒・教師双方に深い学習経験をもたらすことが、 調査結果によりわかっている。  バーチャル・リアリティを活用した新しい、今までにない体験を得られる学習方法で教育を行うことは、デジタルネイティブと呼ばれる次世代を 担う子供たちに、今までにない高い学習効果をもたらす。そして、今までにない体験で教育を受け た子供たちは、今までにない発想で、現世代であ るわれわれの発想をはるかに超えた、明るい未来 を作りあげていく人材に育つことを期待したい。

3. VRを取り巻く状況とzSpace

2016年は、VR元年と呼ばれた。ヘッドマウントディスプレイ、モーショントラッキング。これらのテクノロジがもたらすエクスペリエンスは、 今までにない新鮮なもので、まるで魔法のようにわれわれを魅了した。

そして、1年が経過した。バーチャル・リアリティはアーリーアダプターを中心に徐々に普及。 ソフトウェアも増加し、市場を形成しはじめた。 もはや、バーチャル・リアリティは特別な物ではなくなりつつある。

現在、バーチャル・リアリティデバイスといえば、頭にヘッドマウントディスプレイを装着するタイプ(没入型ヘッドマウントディスプレイ)が主流である。これらのデバイスには、下記のような課題がある。

●期待したほどの没入感は得られなかった落胆

「バーチャル・リアリティの没入感はすごい!」 という宣伝を鵜呑みにし、過度な期待をもちながらヘッドマウントディスプレイを装着してしまったケースである。

ヘッドマウントディスプレイは 視界すべてを覆い尽くすのではなく、目の前に大きなディスプレイがあるように見えるだけである。

そのため、たとえば現実で左右を見ようとした 場合、目だけを動かして左右を見ることもできるが、ヘッドマウントディスプレイでは、それができない。

目だけを右に動かしてみても、そこには ただ暗闇があるだけである。すこし右を見るだけでも、首ごと右に動かす必要がある。

最大の売りは「没入感」であるが、実際はこの ような技術的制約の積み重ねで現実との差を感じ、思考が現実に引き戻されるのが現状である。

●VR酔い

ただし、バーチャル・リアリティの体験にまだ 慣れていない時期には、没入感の新鮮な体験がある。

しかしそれがあるゆえ、ヘッドマウントディ スプレイから見える風景と、実際の身体感覚とのミスマッチも生じてしまう。

その結果、たとえばFPS(一人称視点のシューティングゲーム)や、レースゲームなどをヘッドマウントディスプレイを使用してプレイした場合、 通常のディスプレイよりも、強い酔いをもたらす傾向にある。

これがいわゆるVR酔いである。3D 酔いをしない人でも、VR酔いをしてしまう可能性はある。特に、長時間の利用には大きな負担が かかる。

●体格にあわせて必要となる調整

ただ装着するだけではなく、体格差にあわせて ディスプレイ部分の上下左右の位置を調整する必 要がある。これを行わないと、使っているうちに 位置がずれてしまうのはもちろん、何もしない場合でも、ピクセルがぼやけて見えてしまう。

●デバイスの大きさ・重さ

実際に長時間使用しようとした場合、VR酔い と同じく大きな障害となるのが、デバイスの大きさと重さである。

現在様々なメーカから発売されているため、実際の重さは製品によって異なるが、 概ね600g前後となっている。これは、通常の眼鏡 の20~30倍程度である。

そのため、長時間の装着は、利用者の首等に負 担がかかってしまう。

●1人でしか体験できない

ヘッドマウントディスプレイを装着する必要があるため、体験を得られるのは、装着した本人だけである。複数人で体験を共有することができない。

●不正確なピクセル表現

ヘッドマウントディスプレイの多くは、レンズ を用いている。この影響で、特に視界の端においてはピクセルがぼやけてしまい、細かい文字など はよく見えなくなってしまう。

ゲーム等では大き な問題にはならないが、業務における利用では、 不正確なピクセル表現では、不都合が発生するケー スもある。

●化粧・衛生面など

頭・顔と深く密着するので、化粧が落ちてしまう場合がある。

また、衛生面の懸念もある。

4. 現実を踏まえ、業務におけるVR活用を考える

前述ように、現状、ヘッドマウントディスプレ イでは長時間の利用が厳しく、業務における本格 的な運用には課題点が多い。

これらの課題をふまえた上で、実運用できるデ バイスとして挙げられるのが、タブレット型バー チャル・リアリティデバイス「zSpace」である。

●ピクセル表現が正確

zSpaceはディスプレイをレンズで拡大するとい うことはしておらず、24インチの3D液晶をその まま体験者が見る仕組みになっている。

そのため、 すべてのピクセルが正確に映し出され、体験者は、 制作者の意図した通りの、ゆがみのない正確な映 像体験を得ることができる。

●身体への負担が少ない

zSpaceにおいてバーチャル・リアリティ体験を 得るためには専用グラスを装着する必要がある。

この高品質な専用3Dグラスを用いることで、高い没入感を得られる仕組みとなっている。

グラスの重さは一般的な眼鏡とほぼ同じであるため、 装着者への負担は薄い。そのため毎日数時間バー チャル・リアリティを利用した業務を行うことも 現実的である。

なお、世の中には裸眼立体視を実現した3D液 晶も存在するが、専用デバイスを使わないため正 確さでは大きく劣り、「そもそも立体的に見えない」というケースも多い。そのため手軽さでは裸 眼立体視が優れているが、正確な表示では専用グ ラス方式が優れている。

●複数人で体験を共有できる

ヘッドマウントディスプレイ式バーチャル・リ アリティは目の前に映像が映し出される方式であ るため、体験を得られるのは装着者のみだが、 zSpaceは設置したタブレットに画面が映し出され る方式なので、オブザーバー用3Dグラスを 用いることで、複数人でVR体験を共有すること ができる(ただし、ヘッド・トラッキングは、メイ ンの操作者のみ対象となる。

「誰を基準に画面を表 示すればよいのか分からない」という事態を防ぎ、 より正確な表示をもたらすためである)。  以上のことからzSpaceは、バーチャル・リアリ ティに正面から向き合い、夢ではなく現実の業務 を見据えたデバイスといえる。

5. 開発について

バーチャル・リアリティはコンテンツありきで ある。結局のところ、どのようなコンテンツを体 験者に見せるのかということが問題になる。開発 のハードルが高い場合は、デバイスそのものの普 及が難しくなる。  zSpaceの場合、メーカからC++/Unity用の開発 キットが提供されている。特にUnityでは、VR表示に必要なアセットが提供されているため、Unity 開発者であれば、比較的簡単にzSpace対応を行うことができる。

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